始めに執行部の現状のご紹介があり、執行部体制が強化され、新たに文理共創戦略担当副学長と成長戦略担当副学長を新設したこと、学院長も施策の継続性を考慮して若返りを図ったことが紹介されました。
次いでCOVID-19への対応として、これまでの対策を継続しながら進めた教育研究活動、学生支援について紹介が有りました。特に2022年1月からはオミクロン株の蔓延により学内の感染者が急増したが、フォロー体制を強化して大学としての対策を取ったためクラスターは発生していない事が報告されました。年度末には感染拡大も沈静化し、学位授与式や新年度の入学式を対面で実施するまでになったこと、授業については教室定員の1/2ルールを設けるなどして順次感染拡大以前の状況に戻りつつあるとのお話をいただきました。
最近の取組ご紹介では、「学長のビジョン共有と積極艇大学経営への転換」の方針の下、これまでの取組に加えて、大学経営における課題として、1)投資効果とコスト分析に基づく大学経営、2)新しい学知の創造に向けた優れた人材の養成、3)研究成果を最大限社会に還元できるシステムを挙げ、それぞれに詳細な説明をいただきました。3つのキャンパス、大岡山、長津田、田町、それぞれの特徴を生かしたアクティビティ、さらには、女性教員が猿橋賞を受賞するなど女性や若手教員の活躍が顕著な現状が紹介され、躍進を続ける力強い東工大の活動を伺う事が出来ました。
A「蔵前工業会からのご報告」蔵前工業会 理事 中島 肇 氏
蔵前工業会が取り組む様々な部会活動の昨年度の状況についてご紹介いただきました。また、工業会の収入は前年比で減収となり、原因として対面での入学式が実施されなかった事による学生会員減少や、K-meetなど主要な行事のオンライン化によるとのご説明が有りました。
活動の詳細では、2021年度も本部総会、理事会や新入生歓迎会、就職支援活動、講演会など全てオンラインでの開催となった事が報告されました。個別の活動紹介では、オンラインで様々な制約が有る中で、新入生歓迎会や就職支援など学生に寄り添う取組について工夫しながら取り組んだ内容を紹介いただきました、こういった東工大の教育研究活動を支援するための「東工大サポーターズ会員制度」について新ためて紹介もいただきました。また、工業会活性化のために女性会員の強化についてもお話がありました。
最後に2022年6月より運用を開始する「くらまえバーチャルプラザ」のご紹介がありました。コロナ禍でリアル対面の懇談が難しい状況下での会員相互交流の活性化を目的として、会員相互の交流や会議スペースとしての活用も可能で、コロナ禍での制約から生まれた新しい試みでもあり、常に進化し続ける蔵前工業会の活動を心強く思いました。
講演会「関西地区の社寺林の衰退と土壌の劣化」
大阪支部副支部長 大阪公立大学高等専門学校 名誉教授 伊藤 和男 氏
神社や寺院が所有する社寺林の樹木の状態に注目し、三重県を含む関西2府5県にある24か所の社寺林について調査を行い衰退の原因解明を行った結果についてお話をうかがいました。
スギやブナの木など各寺社林の樹木につて、樹勢を5段階評価するとほとんどの寺社林が衰退している現状が明らかとなった。衰退の原因が土壌の劣化にあるのではないかとの仮説を立てて、土壌のpH値、樹木の栄養となるCa、Mg、Kのイオン濃度、樹木の生長を阻害するAlイオン濃度について詳細に分析を行った。その結果、予想通り樹木の劣化と土壌のpH値、栄養素となるイオン濃度は強い相関を示す事が分かった。一方で、樹木の劣化が認められなかった滋賀県の多賀退社、和歌山県の丹生都比売神社、京都府の龍神社の土壌は中性に近いpH値で栄養素となるイオンの減少も認められなかった。これは、土壌の母体が塩基性岩で土壌中のCaやMgイオン濃度が高く酸性化もしにくいことを明らかにした。
樹木の劣化が認められた京都府の伏見稲荷神社で劣化した樹木の周囲の土壌改良を行う事で、樹勢の回復が顕著に観察されたことで仮説が証明された。土壌酸性化の原因として、長期間の酸性雨(大気汚染)による酸性化、酸性化しやすい土壌のタイプ、酸性化しやすい地形を挙げる事ができ、酸性雨の原因物質の削減、すなわち化石燃料使用量の削減が有効である事、すなわち地球温暖化対策と同じであるとの結論を説明いただき、身近な社寺林の長期間にわたる地道な研究結果から、地球環境問題の重要性を改めて理解する貴重な機会となりました。
大阪支部 副支部長 飯島賢二(昭和57年材料博士修了)記