@「東工大の現状について」 東京工業大学 理事・副学長 渡辺 治 氏
*昨年1月より始まった新型コロナウィルスの東工大の具体的な感染対策
・感染が日本でも確認された早期に、東工大は警戒体制を作り、対策本部で対応レベルの設定を行い、
大学の諸行事の縮小、オンライン授業を開始した。そして学生生活を細かく支援すべく、色々な
素早いアクションを取った。 緊急事態宣言の下では感染を抑える対策をレベルによって進め、
研究・教育活動を期間内に終了できた。
・この経験から、今後もハイブリッド授業を新しい教育方式として進める予定でいる。
・またCovid−19に関する東工大の技術・特許を解放し社会貢献に努めた。
*昨年の大学運営の取組みについて、東工大は積極的大学経営を推進する。
・国立大学法人の経営モデルの実現化に向けたアクションプランを創設した。
・研究、教育、大学経営、社会貢献の各システムでの改革を行ないつつ、相互の有機的な運営を行なう。
・技術をベースに子会社(TTI)を作り、研修、講習、コンサルティング、研究支援サービスなどの
事業を行ない、社会連携を推進する。2031年の創立150周年に向けての東工大の将来構想の中でも、
東工大の理念は「チーム東工大」として、多様性と寛容、協調と挑戦、決断と実行をキーワードに、
自立しながらも協調し合い、明るい未来を創造する。
以上、コロナ禍でも東工大の力強い活動を伺いました。
A「蔵前工業会からのご報告」蔵前工業会 理事 黒田 徹 氏
昨年度、コロナ禍で蔵前工業会は色々な行事が中止・延期された結果、工業会の収支は減収だが、見かけ上増益となった。
・Zoom会議システム他を使い、講演会、各種セミナーを開催、特にk−Meetは完全リモート体制で
就職支援活動を行なった。
・正会員向けHPを開設して、会員への講演会・セミナーの記録へのアクセスを始める。
・各支部の昨年の総会等は、多くがオンラインとメ−ルにより行なわれた。
・東工大オンラインコミュニティを作り、東工大の学生、教職員、留学生と蔵前工業会をつなぐ
ネットワークとして利用していく。(教育の世界でも情報技術が進んで来ている。)
・東工大サポーターズ会員制度についてもご紹介いただいた。
以上、コロナ禍でも工夫を凝らした蔵前工業会の活動を伺いました。
講演会 「未来を生み出す材料化学」
大阪支部副支部長 、大阪大学特任教授 飯島賢二氏
・エレクトロニクス産業を中心に20世紀はデジタル革命が生活を大きく変えました。過去100年でエレクトロニクス産業が生活をどう変えたかを概観し、今後30年の未来はどの様に変わるかの予測に基づき、新電子技術・材料が寄与する点を中心に60分の講演をされた。
(1).エレクトロニクス産業が実現したこと;
・現在の情報機器を支えている技術のベースに電子材料の進化が有る。情報処理のアプリケーションを
支えている物は、ハードウェア(シリコンウェファー、磁性材料、メモリ、蓄電材料/リチウム
イオン電池など)である。新しい技術が実を結ぶには時間が必要で、先行的な取組が必要
不可欠である。 具体的な変革として1985年頃からインターネットが普及しだし、
30年後の2015年にはインターネットは不可欠な情報ツールとなった。
(2).未来は予測できるのか?;
・20世紀を予測した1901年1月1-2日の報知新聞に、未来の予言が記載されており
「電話・写真電送、エアコン、高速鉄道・旅客機他の利用等」現在の生活様式を高い
確率で予測していた。また1964年の小学生雑誌に、21世紀にはインターネット、宇宙旅行が
期待出来るとの記載からも未来は予測出来ていた。個別の技術や課題に注目した未来予測が
重要である一方で、社会がどのように変化するかを考える事も重要である。
(3).30年後(2050年ころ)は、どんな世界になっているか;
・未来のマクロトレンドとして、人口増、所得増により→ 都市化の進行に伴い人口と富が
集中する事によって、以下の3分野で新事業が創設される:
@農業(IT技術を駆使した企業の台頭等)、
A健康医療(家庭での診断、遠隔手術用ロボットの普及他)、
B移動手段(自動運転の自動車、ドローンの利用したスマートシティーの建設が進む)
(4).未来を切り拓く材料科学;
・未来社会を切り拓く上記3つの事業実現のためには高速情報処理技術(データのリアルタイム
での共有・解析)を利用した結果を行動につなぐ事がキーを握っている。今後30年の間には、
地球環境と共生しながら情報化社会が世界中の情報を統合した新しい知識社会を作り出して
いくと予測される。その重要な進歩に対して新しい電子材料の開発が更に必要とされている。
*質疑(総会後の情報交換・懇談会から)
Q;未来社会の予測から新技術を作る材料開発の重要性を伺ったが、東工大も材料研究は強いが
(学内の材料/元素戦略チーム;細野教授)、材料だけでは利益が少なく、ハードウェアから
アプリケーション・社会実装を狙うにはどの様にすると良いのか?
A;大学だけでは難しく、企業と共同で開発をする。その例としてUSAシリコンバレーが大学
(スタンフォード大学他)とベンチャー企業他で成功してきたと考えています。
大阪支部 幹事長 大軒康夫(昭和49年化工修了)記