第35回関西蔵前講演会 報告
(中央電気倶楽部(リアル)・ZOOMウェビナーによるハイブリッド講演会


蔵前工業会の関西5支部は、4月23日(土)にハイブリッド形式にて第35回関西蔵前講演会を開催しました。
冒頭,大友朗紀 理事・兵庫県支部長(S48機物50修)より「今回は中央電気倶楽部の会場とWeb配信によるハイブ
リッド方式での開催に関西地区以外からも含めて多数の参加(約140名)をいただき感謝します。今回はSDGsの社会に
向けて新ビジネス・テクノロジーについてご講演いただきます。」との開会挨拶がありました。

<主催者挨拶> 
蔵前工業会 井戸清人理事長、(株)国際経済研究所副理事長

 ・今回は一番ホットな国際情勢「ロシアのウクライナ侵攻」を取上げて,ウクライナへのG7を中心とする
経済支援,ロシアに対する金融制裁の概要・ロシア金融市場へ影響,及び国際経済への見通し,日本経済への
今後の影響他について,最新の財務情報を使用して詳細に説明されました。全国から参加された会員・一般参加者
(如水会会員他)から,チャット等でのコメントをいただきました。

   
   
   井戸清人理事長



<来賓挨拶> 
東工大 益一哉学長

 ・現在の東工大の組織・執行部の紹介,COVID-19への昨年の対応状況,大岡山キャンパス(Taki Plaza/留学生との
出会いの場)の説明がありました。東工大の統合報告書の中から,成長戦略について大学経営戦略(田町キャンパスの
土地活用事業他),共創戦略での社会連携活動の推進などの話をされました。

 東工大の未来のシナリオについて,教育未来創造会議でも取上げている「理工系人材のジェンダーギャップ解消に
向けて」女子学生比率を30%にするために,リカレント教育を産・官が一緒になって全国的に進め,パワフルな理系女子の
育成に努めるとの考えが学長より説明されました。

     
   益一哉学長の挨拶の1シーン  



講演 1「空き家を活用したサステナブルなライフスタイルづくり」
講師: (株)巻組 代表取締役 渡辺享子氏(東工大 社会工学修士H23)


 (株)巻組の事業紹介の後、空き家を活用し住宅もライフスタイルもより自由にサステナブルにすることで、その土地に
合ったコミュニティーができて、オルタナティブな住宅供給のビジネスモデル他について、以下の説明をされた。

1.巻組は、東日本大震災後の10年間の復興のあり方を見て来た中で、地域経済も人の心もサステナブルな暮らしとは
何かを考え続けてきた。宮城県石巻市を拠点として、市内の空き家を活用したシェアハウスの運営等を行い、地域にやって
くる多様な若者たちに、一般的な賃貸住宅に代わる住まい方のオプションを提供する新しい不動産ビジネス(大家業と設計
施工中心)を営んで活動している。

2.空き家利用での問題点と対策について:・空き家は、消費者の嗜好や、ライフスタイルを変えることで、コミュニ
ティーも変わり活用出来ると考えている。又一般の人にとって絶望的に悪い立地でも、独自のライフスタイルの人(芸術家
や狩猟家等)に対しては別の利用価値があり活用を図ることができる。

 ・空き家の活用では、過剰な機能を削ぎ落とし、作る時も使った後も廃棄物が出ないリノーベーション手法で最小限の
改造にする。手軽な入居手続き(即日入居可、短期契約可能) ・入居者の対象を拡げて(定住者以外に長期滞在者、リモート
ワーク等)多様な人が利用し易く、自由にカスタマイズして、エコロジカルなライフスタイルを、無理なく楽しめる住まいを
実現することに取り組んでいる。

3.今後の事業展開:コミュニティーづくりの機会提供のため、日本郵政とのタイアップの検討や、相続にともない発生
する空き家の活用のために遺贈バンクの設立を構想している。

     
     
  渡辺享子氏の講演の1シーン  



講演 2「カーボンニュートラル社会実現に向けたグリーン・トランスフォーメーション技術展望」
講師:東京工業大学 科学技術創成研究院ゼロ-カーボンエネルギー研究所 所長 加藤之貴氏


 COP26(2021年)では、温暖化対策1.5℃努力目標(パリ協定)達成に向け、日本政府も2030年度に温室効果ガス
を2013年度比46パーセント削減し、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする(カーボンニュート
ラル、CN)社会の実現を目指す事を表明している。

1.日本における展望:現在、一次エネルギーの85%が化石燃料に依存しており、この削減は緊急の課題である。又最終
エネルギー消費は、電力以外の熱利用が75%を占めている。そこでCNの達成のために、再生可能エネルギーや原子力への
置換え、CCS(二酸化炭素回収・貯留)により、CO2の排出を抑え、非電力分野のエネルギー消費では、グリーン化の為に
エネルギー貯蔵・変換、炭素循環(カーボンリサイクルCCR)の技術開発(グリーントランスフォーメーション)が必須で
ある。

2.炭素循環プロセスに関する技術例:・能動的炭素循環産業プロセス(ACRES)はCO2排出削減と炭素利用の両立を
図り、究極の低炭素化社会の実現を目指す。このほかにカーボンニュートラル製鉄(iACRES)で鉄鉱石を製鉄し、電気
分解セル(SOEC)の大容量化の技術の実用化、国内での水素の供給力の強化、安定、安全な原子力エネルギー源として新規
高温ガス炉(HTGR;炉心溶融が極めて起きにくく、分単位で出力応答可能)と、小型安全溶融塩炉(MSR;燃料交換
20年間不要、放射性元素の減量化可能、)により、再生可能エネルギーの出力変動への対応等が期待出来る。

 CN技術を産学官で取り組み、新しい事業(CN産業)創出に向けて、東工大GXI産学連携委員会の第1回総会(フォーラム)の紹介をされた。

     
     
   加藤之貴氏の講演の1シーン  


最後に久保田耕平 京滋支部長より「多数の参加への御礼、講演者への御礼、関係各位への御礼」を述べられ閉会した。                               

   
   リアル参加者の集合写真



  

                                          堀 学(S51経営)HP編集