関西5支部(大阪支部、兵庫支部、京滋支部、和歌山支部、岡山支部)では、本ジャーナル2008年春号で案内したとおり、5月17日(土)午後1時30分より大阪市北区の中央電気倶楽部において、「第21回関西蔵前講演会ならびに懇親会」が開催された。
下記に、その概要を報告します。
当日は、大阪市立大学大学院文学専攻教授 村田正博氏と、東京工業大学大学院有機・高分子物質専攻教授 渡辺順次氏(S52年東京工業大学 大学院
理工学研究科化学工学専攻博士課程修了)のお二方を講師にお迎えした。
まず、神山本会実行委員長の司会でスタート、本会組織委員会委員長の鶴田大阪支部長の挨拶の後、講演は午後1時30分より4時00分まで行われた。
村田教授から、「勇気と希望の書としての『萬葉集』」という演題で、ご講演頂いた。
『萬葉集』は24代舒明天皇から47代淳仁天皇までの130年の間に歌われた4500首の歌を集めた歌集であり、体裁としては全二十巻、三大部立「雑歌」・「相聞」・「挽歌」から成り立っているす。「雑歌」・「相聞」は当時生きておられた方々の歌、「挽歌」は亡くなられていた方々の歌であり、「雑歌」・「相聞」については前者が公的な場、後者が私的な場で歌われた歌と区別されているとのことであった。現在は電子メール等の発達により、容易に多くの物事を伝えられるようになったが、『萬葉集』が編纂された当時の人々にとって、心の中に秘めた思いを相手に伝えることはいかに大変であったか、当時の人々の勇気や希望、その力の源泉について、さまざまな思案を巡らせることができた。
続いて渡辺教授から、「高分子と液晶−自然界の神秘・ここにも液晶が−」という演題でご講演頂いた。
高分子と液晶の相関、構造色に起因するナノ構造の詳細を示すとともに、その構造がいかに創成されてきたか、生物のナノテクノロジーの妙味についてご講演頂いた。
生物が創り出す構造は、その構造を形成する分子が光学活性であり、コレステリック液晶と呼ばれるらせん構造を有する液晶が基盤となっているとのこと。
例えば、タマムシのような昆虫の羽に見られる金属光沢は、キチン質のコレステリック液晶のらせんが固定化し、そのらせん周期により光の選択反射であり、その他多くの構造の組織体部にらせん構造が見られているとのこと。
そして、自然界に存在する生物に見られる発色は、可視光の屈折・反射・干渉・回折・散乱などによる発色=構造色と呼ばれており、可視光波長オーダーの単分散微粒子が規則配列した3次元結晶でも同様の発色現象が観察されることから、講演の中では、単分散微粒子をカラスの羽に降り掛け、孔雀の羽にするといった実験なども紹介され、会場は大いに沸いた。
会場を3階の大食堂に移して、午後4時30分過ぎから6時までの間、三宅正一本会実行副委員長の司会のもとに、講演会の講師を含め80名の参加を得て、懇親会が開かれた。野依辰彦蔵前工業会常務理事・兵庫県支部長の開催の挨拶の後、櫛橋義雄京滋支部長のご発声による乾杯を皮切りに、食事とともに懇談が行われた。
会場では、講師を囲んで講演された研究の詳細な話を聞く輪、先輩が若き後輩を囲んで大学時代のトピックスや現在の仕事の話を聞きアドバイスを送っている輪、久しぶりに会う友と近況を報告しあう輪など、多くの懇談の輪が作られていた。
席上、如水会大阪支部からのお客様・遠藤三夫 幹事長、蔵前徳島県支部からのお客様・村上理一支部長のご挨拶、新入会員の決意表明などがあり、続いて、陶山靖彦・岡山県支部長の先導で東京工業大学歌を斉唱。最後に、午後6時池之内真佐美和歌山県支部長の閉会の挨拶を締めとして、これからの一年間、それぞれがくろがねの扉を開け、大き岡を越えることを誓いつつ、来年の再会を約して散会した。
下記は、散会前に全員で撮影をしたものである。
追記
講演会には115名の方が参加されたが、そのうち25名(参加者の約22パーセント)が平成になって卒業・修了された方であり、10名(参加者の約9パーセント)が蔵前工業会員以外の方でした。今後とも蔵前工業会関西5支部の活動を若い世代の会員やさらには会員以外にも広げていきたいと考えております。
以上
文責:太田高志_H16修 有機・高分子_大阪支部
HP編集:宮本 廣行_S33 機械_京滋支部