くつろぎのひと時を
〜 平成26年11月_午餐会 〜

午餐会としては異例の土曜日の開催になったが、大勢のご参加をいただいて、嬉しいコンサートになった。
木管五重奏という形式は、管楽器ばかり5人のアンサンブルで、弦楽器4人で構成する弦楽四重奏と並んで
室内楽の標準的な編成の一つとして広く親しまれている。
 


[ ファウム木管五重奏団の皆様 ]

[ 演奏曲目の紹介 ]
1曲目はモーツァルト「ディヴェルティメントNo.14 K270の第1楽章。幕開けにふさわしい明るい軽快な曲としてこの曲を選んだ。モーツァルトは、生憎なことに木管五重奏という編成の曲を残さなかったので、ここでは木管六重奏の原曲を五重奏用に編曲した版を用いた。  
2曲目は日本の唱歌をメドレーにした「日本の心第2」(杉浦邦弘編曲)。この曲は「森の水車、夏は来ぬ、小さな秋見つけた、冬の星座」など四季を彩る懐かしのメロディーで、ゆったりくつろいでいただきたいと考え、選曲した
3曲目は つい7年前に亡くなった現代作曲家アゲイ「5Easy Dances」から、私達が特に気に入っているタンゴとボレロの2曲を演奏し、歯切れのよいタンゴ、エキゾチックな雰囲気を持つボレロを楽しんで頂いた。
アゲイは著名とは言えない作曲家なので、簡単に紹介する。
1912年(タイタニック号事件の年)にブタペスト近郊の寒村で生まれ、27歳の時、ナチスの抬頭を嫌ってアメリカに移り、そこで市民権を得て、NBCラヂオ局で人気の音楽番組を担当するなどして活躍した。作品としては、初心者向けのピアノ曲集がベストセラーになった。
この日採りあげた
5曲からなる舞踊曲集は、どこか懐かしさも感じられる短い楽しい舞曲集である。
 
    [メンバーと楽器の紹介 ]
  平木真木子(フルート)は、三菱電機でソフト開発を担当するエンジニア。
フルートは幼いころから習い始め、あちこちのオケにも参加したが、最近は仕事との両立が難しいこともあり、このファウムでのアンサンブルを楽しんでいる。
非常に意志の堅固な方で、控えめながらしっかり意思表示をされる点は一目置く、尊敬すべき存在である。

仕事柄一日中パソコンに向かうことが多く、運動不足の解消を目指して
20代からバレエを習い始め、バレエ教室に通う傍ら、名著と言われる「バレエ伝統を超えて」(Anna Paskevska著)を、この春、翻訳・出版した。
(やや高度な内容ですが是非ご覧ください、と紹介させていただいたところ、さっそく
4冊もお買いあげいただき、本人もとても喜んで、お礼を申しておられました。ありがとうございました。)
平木真木子さん     
  古田泉(オーボエ)は、大阪市立大学の図書館に司書として勤務。
高校生時代から楽器に興味を持ち、大学に進学して音色に惹かれていたオーボエを習い始め、京都・大阪のアマチュアオケを経て、現在は大阪府医師会フィルに所属し、木管の中堅メンバーとして活躍している。
オーボエと言う楽器は、木管楽器の中の花形的存在ではあるが、ややもすると鋭い痩せた音色になりがちなのに、彼女の音はお人柄そのもののような柔らかなしっとりした音色で、音に対するこだわりと、修練のあとが感じられる。

 メンバー5人のうち、唯一アメリカの(アマチュア)オーケストラに所属した経験をもつ。
古田 泉さん    
 

三木泰子(クラリネット)は、大阪音楽大学クラリネット専攻を卒業し、このグループでは唯一正規の音楽教育を受けた貴重な存在で、プロ演奏者としての資格も実力も兼ね備えた非常に優れたプレイヤー。
いわば当五重奏団の要とも言うべき存在であるが、物静かで控えめなお人柄で、中音域の地味なパートを堅実にこなしつつ、温かい音で全員をしっかり引っ張って行く頼りになるメンバーである。

演奏上の議論でもあまり多くを語られないだけに、彼女の発言は重く受けとめられている。

三木泰子さん    
  松本治夫(ホルン)は、トヨタ自動車のディーラーとして神戸を中心に勤務し、一昨年退職後は趣味をカメラにも延長して、充実した毎日を忙しく過ごしている。音楽は、伊丹市吹奏楽団のユーフォニューム奏者として、また80名を超える団員を統率する団長としても長年活躍され、その後オーケストラに転向され、今は貴重なホルンの名手として、大阪府医師会フィルや篠山のメロマン室内合奏団などで幅広く活躍している。
 彼もどちらかと言うと、「男は黙って……ビール」のタイプで、黙々と自分のパートをこなし、ある時は全員の演奏を陰で支え、ある時は唯一の金管楽器として主役に躍り出て、力強くも豊かな音を響かせている。
松本治夫さん    
  私 穴原明司(ファゴット)は、昭和29年の入学と同時にオーケストラ部に入部した。
当時はまだ戦後の名残が強く、十五人前後のみすぼらしいオケであったが、N響の尾原勝吉氏をお招きし、薫陶よろしきを得て、卒業する頃にはブラームスの交響曲を演奏できるまでに成長した。
私は、その後の約50余年を、勤務地の変遷とともにアマオケを渡り歩いて来たが、今年80歳を迎えたのを期にすべて退き、この五重奏を軸に気の合ったメンバーとの室内楽をゆっくり楽しんでいる。
穴原明司さん    

  [それぞれの楽器発音原理など ] 
フルート: 吹きだされる気流が障害物(歌口)に当たった摩擦で発する一種の摩擦音で、和楽器の尺八と同じ発音原理で、自然界では木枯しなどと同類である。
オーボエ: 葦の軸を薄く削って二枚対抗させたリードと呼ぶ振動子により発音する。音の波形が弦楽器に似ているためもあってバロック時代から合奏団に加わって活躍してきた。 
クラリネット: 楽器の歴史の中で最も新しく、モーツァルトの時代に登場した。前述のオーボエと異なり、一枚のリードで発音する。
甘く柔らかい音色で、中音域のアルトに該当し、モーツァルトは発明されたばかりのこの楽器を好み、素晴らしい名曲を残した。
 
ファゴット: 低音を受け持つため、全長3.5m近い筒を折り畳んだ形で、薪を束ねたように見えることからファゴット(イタリヤ語で「薪束」の意)という名称が生まれた。
英語圏ではバスーンとも呼ばれる。オーボエと同じく二枚のリードで音を出す。
 
ホルン: この楽器は唇の振動で音を出す俗にいうラッパの種類で、分類上は金管楽器に属するが、豊かな包容力のある音色で、上記4種の個性的な響きの木管楽器を融合させる重大な機能をもっている。 
 
再び演奏に戻る。    [古谷昭雄氏のバリトン独唱! ] 
 
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モーツァルトの作品で「歌劇フィガロの結婚」より第9アリア「もう飛ぶまいぞ このチョウチョ」を、本関西蔵前午餐会幹事の古谷昭雄氏(S30電気)の独唱で演奏した。
この曲は、ご婦人方に纏わり付いてとかく面倒をかける小姓ケルビーノが軍隊に入れられることになったのを揶揄してフィガロが歌うコミカルな行進曲風のアリアで、歌劇の中でも特に有名な一曲。
本来はバリトン役が歌う曲だが、今日は特別にテノールの古谷氏に無理にお願いして歌っていだいた。

演奏が終わるや、長年コーラスで鍛えた声量と声色に満場の大喝采を浴び、ご本人はイマイチだったと謙遜しておられたが、もう大変な反響であった。

モーツァルトで結ばれたご縁の奥様も同席しておられ、やや俯きながら盛んに拍手を送っておられた。

次も歌劇の名曲で、ビゼー作曲「カルメン」から有名なメロディーを取り入れたファンタジーを演奏した。
クラシック音楽といえば、まず「運命」と「カルメン」があげられよう。しかし「運命」は冒頭のダダダダーンの一節だけが有名であるのに対し、「カルメン」は沢山のメロディーがあり、そのどれもが有名で多くの人々に愛されている。
そのため後世の人がいろいろな楽器用に編曲して楽しんでいるが、ここでは、ホロコーム編曲の版を用いた。

最後の曲は、ワルツ王として名高いJ.シュトラウスポルカ「観光列車」。軽快な楽しい曲で、ポルカの中でも特に人気が高い。
この曲には、二つの仕掛けがあり、一つは汽車の汽笛を、ファゴットの発音ミスを使った擬音で
模しているのと、もう一つは曲の最後に車掌の笛が高らかに吹き鳴らされ、大勢の笑いを誘った。


そして最後に古谷氏夫人にリードをお願いして、皆さま全員で昔懐かしい「青い山脈」と「故郷」を声高らかに歌っていただいた。
その後も、まだちょっとお名残惜しいので「ロンドンデリーの歌」をアンコール演奏して和やかに閉会した。
 
 (S35繊維修士、穴原記)