関西蔵前午餐会講演要旨

演題「高効率ガスタービンの開発と最新鋭コンバインドプラントの現状」

 三菱重工業(株)高砂製作所では1963年に発電用ガスタービンの初号機を納入して以来、本年3月末時点で504台の累積受注台数を数えるまでに至っている。1985年に東北電力東新潟火力発電所第3号系列として、タービン入口ガス温度1,150℃級大形ガスタービンを使用した世界最大の総出力1,090MWのコンバインドプラントを完成し、新鋭蒸気タービンプラントの熱効率を相対的に一割上回る高効率を実現した。本プラントを契機に、新設火力発電に高効率コンバインドプラントを採用することが世界的な流れとなった。

さらなる高効率達成のためには、主役であるガスタービンの高性能化が必須であり、それを可能にするタービン入口ガス温度の上昇に立ちふさがる課題、すなわち燃焼器やタービン翼等の高温部品の耐熱性と発生するNOxの増加に対して、材料の高度化と冷却技術の向上、低NOx燃焼器の開発に世界中の主要ガスタービンメーカーがしのぎを削っているのが現状である。

三菱重工業(株)では、高砂製作所内に平成9年に完成した出力330MWの複合サイクル実証発電設備を有効に使って、新機種の開発、各要素の改良を進め、現在では1,500℃級のG形ガスタービンを主力に、世界と肩を並べて戦っているビジネスとなっている。

その最新のG形ガスタービンにおいても、単独では39%(低位発熱量基準)の熱効率であり、残りの61%のエネルギーは約600℃の排ガスとして排出されている。そこでガスタービンの後流に排ガスボイラを設置し、蒸気を発生させ、その蒸気で蒸気タービンを回して、排ガスエネルギーを電力として回収する、すなわちコンバインドプラント化が大出力、高効率プラントの実現を可能にした。国内の事業用ではシステムが比較的簡潔なガスタービンと蒸気タービンを一軸に繋ぎ一台の発電機を駆動する一軸式コンバインドプラントが指向され、最新鋭の東京電力川崎火力発電所第1号系列の初号機として昨年6月に運開した第1−3軸では、出力500MWで発電端熱効率59%(低位発熱量基準)の世界最高効率を実現した。

ガスタービンにはLNG等のクリーンな燃料が使われることと、圧倒的な高効率であることから、従来の石炭焚火力に比べて相対的に排出するCO2の量を50%削減できることが、現在の地球温暖化対策に有利な点となっている。しかしクリーンな燃料も資源的には制約があるため、燃料多様化対策として、残渣油等の粗悪油や石炭をガス化してコンバインドプラントに使用する IGCC(Integrated Gasification Combined Cycle)について精力的な取組が行われている。

石油IGCCについては2003年に新日本石油根岸工場に431MW の発電プラントが完成し、順調に運転されている。石炭IGCCは現在常磐火力勿来発電所内に建設された250MW の実証プラントが試運転中であり、この9月に2,000時間の連続運転を達成しており、この成果を踏まえた実プラントの実用が期待されている。


以上